その下痢、「よくあること」で済ませて大丈夫?
見分け方をやさしく解説します
下痢は誰もが経験する身近な症状ですが、「すぐ治る下痢」と「続く下痢」では、考えるべき原因がかなり違うと言われています。
この記事は前半でサクッと自分の状態をチェックできるようにまとめ、後半ではガイドラインに基づいたやや専門的な内容まで踏み込んで解説します。
あなたの下痢は「急性」?「慢性」?
⏱ 急性下痢
だいたい2〜3週間以内に治まることが多いタイプ
- 感染性腸炎・食中毒
- 食べ過ぎ・飲み過ぎ
- 薬の副作用
- ストレス・自律神経の乱れ
📅 慢性下痢
4週間以上続く場合に考えられるタイプ
- 過敏性腸症候群(IBS)
- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
- 大腸ポリープ・大腸がん
- 甲状腺・糖尿病など全身の病気
※ この期間の分け方は、日本消化管学会「便通異常症診療ガイドライン2023 慢性下痢症」でも下痢を持続期間によって整理する考え方が示されています(あくまで目安であり、個人差があります)。
⚠️ このサインがあれば早めに相談を
- 🩸 血が混じる便が出る
- 🌡️ 発熱がある
- ⚖️ 体重が減ってきた
- 🌙 夜中にも下痢で目が覚める
- 😣 強い腹痛がある
- 🎂 40歳を過ぎて初めて下痢が続くようになった
これらは「警告症状」と呼ばれ、単なる体質や食事の影響ではなく、炎症性腸疾患や腫瘍など、より詳しい検査が必要な病気が背景にある可能性を考えるきっかけになると言われています。1つでも当てはまる場合は、自己判断で様子を見続けるより、医療機関で相談することが望ましいとされています。
ここからは、ガイドラインに基づいて少し専門的に解説します。気になる部分だけ読んでいただいても構いません。
下痢の医学的な定義
下痢とは、水分量の多い便(水様便や軟便)を頻回に排泄する状態を指します。日本消化管学会の「便通異常症診療ガイドライン2023 慢性下痢症」では、下痢および慢性下痢症の定義・分類が整理されており、持続期間や病態によって原因の検討を進める考え方が示されています。
慢性下痢の原因として考えられる病気
過敏性腸症候群(下痢型)
検査では明らかな器質的異常が見つからないものの、ストレスなどを背景に下痢や腹痛を繰り返すタイプです。日本消化器病学会の「過敏性腸症候群(IBS)診療ガイドライン2020」では、症状やRome基準に基づく診断の考え方が示されており、慢性下痢の原因の中でも比較的頻度が高いとされています。
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
下痢に加えて血便や腹痛を伴うことが多く、若い世代にもみられる病気です。日本消化器病学会の「炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020」でも、診断・治療における内視鏡検査の位置づけが整理されています。
大腸がん・大腸ポリープ
病変によって便の通過が妨げられることで、下痢と便秘を交互に繰り返すような便通の変化がみられることがあるとされています。
そのほか、全身の病気が関係するケース
- 甲状腺機能の異常
- 糖尿病に伴う自律神経障害
- 慢性膵炎などの膵疾患
- 乳糖不耐症など、特定の食品に対する不耐性
大腸内視鏡検査が検討される目安
「便通異常症診療ガイドライン2023 慢性下痢症」では、慢性下痢症の鑑別診断における内視鏡検査の意義について整理されており、警告症状がある場合や、年齢・経過から器質的な病気が疑われる場合には、大腸内視鏡検査が鑑別のために有用な検査の一つとされています。
- 下痢が4週間以上続いている
- 血便や体重減少などの警告症状を伴う
- 40歳以上で、これまでと違う便通の変化がある
- 生活改善や市販薬で症状が改善しない
- 家族に炎症性腸疾患や大腸がんの方がいる
過敏性腸症候群のように検査で明らかな異常が見つからないことも少なくありませんが、炎症性腸疾患や腫瘍性の病気を除外するという意味でも、内視鏡検査が役立つとされています。
よくある質問
Q. 下痢はストレスが原因のことも多いですか?
過敏性腸症候群のように、ストレスや自律神経の乱れが関係していると考えられる下痢は少なくありません。ただし、ストレスが原因だと自己判断する前に、血便や体重減少などの警告症状がないかを確認することが大切とされています。
Q. 下痢のときに食べてもよいもの、避けたいものはありますか?
一般的に、消化の良いおかゆやうどん、スープなどが勧められ、脂肪分の多い食事やアルコール、カフェイン、香辛料は症状を悪化させることがあるため控えめにすることが望ましいとされています。脱水を防ぐため、経口補水液などで水分とともに塩分・糖分を補給することも有用とされています。
Q. 下痢止めの薬は自己判断で使ってもいいですか?
感染性腸炎が疑われる場合、下痢止めの薬が病原体の排出を妨げ、症状の改善を遅らせる可能性があるとされています。発熱や血便を伴う下痢では、自己判断で使う前に医療機関に相談することが望ましいと考えられています。
まとめ
下痢の原因は、一時的な感染や食事の影響から、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、まれに大腸がんが関わるケースまで幅広いと考えられています。
特に下痢が4週間以上続く場合や、血便・体重減少などの警告症状を伴う場合には、大腸内視鏡検査による精密な評価が検討されます。
「いつもの下痢」と決めつけず、長引く場合や気になる症状を伴う場合は、早めに医療機関で相談することが望ましいと考えられています。
医師監修:島田竜 医師
医学博士/さいたま市民医療センター 大腸外科部長
日本外科学会認定 専門医
日本大腸肛門病学会認定 専門医
日本消化器内視鏡学会認定 専門医
日本消化器外科学会認定 専門医
参考文献
- 日本消化管学会(編)「便通異常症診療ガイドライン2023 慢性下痢症」南江堂、2023年
- 日本消化器病学会(編)「過敏性腸症候群(IBS)診療ガイドライン2020」南江堂、2020年
- 日本消化器病学会(編)「炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020」南江堂、2020年

