健診で「便潜血陽性」と言われたら
次に何をすべきか、数字と根拠で解説します
健康診断や職場検診で「便潜血陽性」と言われると、「大腸がんなのでは?」と不安になる方は少なくありません。
しかし、便潜血陽性だからといって必ずしも大腸がんとは限りません。実際には大腸ポリープや痔、大腸の炎症などが原因となることもあります。
一方で、便潜血陽性は大腸がんや前がん病変である大腸ポリープが見つかるきっかけになることもあり、放置することは望ましくないとされています。
この記事では、便潜血陽性の意味、大腸がんが見つかる確率、考えられる原因、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)が必要な理由について、ガイドラインに基づいて解説します。
便潜血検査とは何を調べているのか
便潜血検査とは、便に混じったごく微量の血液(肉眼では見えない)を検出する検査です。大腸がんやポリープがあると病変部分が出血することがあり、その血液(ヘモグロビン)を免疫学的に検出します。
- 現在日本で広く使われているのは免疫法(2日法)で、食事や薬の制限が不要とされています
- 2日分のうち1日分でも陽性であれば「要精密検査」と判定されます
- 大腸がんは毎日出血するわけではないため、1日分だけの陽性でも精密検査の対象とされています
便潜血陽性で見つかる病気
便潜血検査は「便に血液が混じっていないか」を調べる検査です。そのため、陽性だった場合に考えられる病気は大腸がんだけではありません。主な原因として以下が挙げられています。
🔴 腫瘍性
- 大腸がん
- 大腸ポリープ(腺腫)
🟠 肛門・直腸
- 痔核(いぼ痔)
- 裂肛(切れ痔)
🟡 炎症・その他
- 大腸憩室出血
- 潰瘍性大腸炎
- クローン病
- 感染性腸炎
⚠️ 便潜血検査だけでは出血の原因を特定することはできません。「痔があるから大丈夫」と自己判断していた方から大腸ポリープや大腸がんが見つかることもあるとされており、原因の確認には大腸カメラによる精密検査が必要とされています。
便潜血陽性の原因の内訳(イメージ)。実際の割合は検診施設・対象集団によって異なります。
便潜血陽性から大腸がんが見つかる確率
便潜血陽性者のうち
大腸がんが見つかる割合
約3〜10%
国内外の複数の検診データ・研究報告より
ポリープを含む何らかの
異常が見つかる割合
約50%
全国の大腸がん検診集計データより
つまり、便潜血陽性の多くは大腸がんではありませんが、約2人に1人にポリープや炎症など何らかの異常が見つかることになります。「精密検査を受けなくてもよい」という結果とは言えません。
大腸がんは早期に発見できれば内視鏡治療のみで完治が期待できる場合もあるとされており、便潜血陽性は早期発見の重要なきっかけとなり得ます。
便潜血陽性 → 大腸カメラ(精密検査)の流れ
便潜血陽性後の流れ
国立がん研究センター がん情報サービスでも「便潜血検査をもう一度受けることは精密検査の代わりになりません」と明示されています。
次回検診(1年後)へ
内視鏡的切除へ
精密検査・治療方針の決定へ
⚠️ 「痔だから大丈夫」が最も多い未受診理由
便潜血陽性後に精密検査を受けない方の理由(複数回答)として報告されている主なもの
- 🥇 「痔の出血かもしれない」39.6%
- 🥈 「自覚症状がなかった」30.5%
出典:国立がん研究センター がん情報サービス
令和2年度のデータでは、大腸がん検診の精密検査受診率は71.4%で、乳がん・肺がん・胃がん・子宮頸がんの5検診中で最も低い状況となっています。精密検査を受けないことで早期発見の機会を逃すリスクがあると考えられています。
便潜血検査(免疫法)の科学的根拠
国立がん研究センター「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン2024年度版」では、便潜血検査免疫法に推奨グレードAが与えられています。同ガイドラインでは、免疫法の感度(大腸がんがある場合に陽性となる確率)は30.0〜92.9%と報告されており、検査法や病変の進行度によって幅があるとされています。逆に言えば、陰性であっても大腸がんを完全に否定することはできないため、定期的な検診の継続が重要と考えられています。
なお、大腸内視鏡検査を対策型検診(住民健診)として健常者全員に行うことの推奨グレードはCとされていますが、この評価はあくまで「症状のない健常者を対象としたスクリーニング」としての評価であり、便潜血陽性後の精密検査としての大腸内視鏡の重要性は変わらないと同ガイドラインに明記されています。
痔があっても精密検査が必要な理由
国立がん研究センター がん情報サービスでは「痔が原因で出血しているのか、あるいは大腸がんやポリープのために出血しているのかは精密検査をしないと分からない」と明示されています。痔と大腸がんは同時に存在しうるため、痔があることは大腸がん・ポリープの可能性を否定する根拠にはならないとされています。
痔があっても大腸ポリープや大腸がんが隠れていることがあります
よくある質問
Q. 便潜血が1日分だけ陽性でも精密検査は必要ですか?
必要とされています。国立がん研究センター がん情報サービスでは「大腸がんは毎日出血しているわけではないので、1日分でも陽性となったら精密検査が必要」と明記されています。
Q. 便潜血検査をもう一度受ければ精密検査の代わりになりますか?
なりません。同情報サービスでも「便潜血検査をもう一度受けることは精密検査の代わりになりません」と明記されており、精密検査として必要なのは大腸内視鏡検査(大腸カメラ)とされています。
Q. 便潜血陽性で大腸がんが見つかる確率はどのくらいですか?
国内外の複数の検診データ・研究報告から、便潜血陽性者のうち大腸がんが見つかる割合は約3〜10%とされています。一方でポリープを含む何らかの異常が見つかる割合は約50%前後とも報告されており、がんではなくても精密検査を受ける意義があると考えられています。
Q. 最近大腸カメラを受けて異常なしだったが、便潜血が陽性になった場合は?
国立がん研究センター がん情報サービスでは、このケースについても自己判断せず医療機関に相談することが勧められています。直近の内視鏡検査からの経過期間や状況によって対応が異なる可能性があるため、医師への相談が望ましいとされています。
まとめ
便潜血陽性は大腸がんを確定するものではありませんが、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)による精密検査が必要なサインとされています。
陽性者のうち大腸がんが見つかる割合は約3〜10%ですが、ポリープを含む何らかの異常が見つかる割合は約50%とも報告されています。「痔があるから」「症状がないから」という理由で精密検査を先延ばしにすることは、医学的な根拠に基づく判断ではないとされています。
大腸がんは早期発見・早期治療が予後に大きく影響するとされており、便潜血陽性を早期発見のきっかけとして活かすことが重要と考えられています。
医師監修:端山 軍 医師
医学博士/帝京大学医学部外科学講座非常勤講師
日本外科学会認定 専門医・指導医
日本大腸肛門病学会認定 専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会認定 専門医・指導医
日本消化器外科学会認定 専門医・指導医
日本消化器病学会認定 専門医・指導医
参考文献
- 国立がん研究センター がん対策研究所「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン2024年度版」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん検診について」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん検診の都道府県別プロセス指標」(令和2年度)

