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腹痛

内視鏡labの腹痛アイキャッチ画像
⚡🩺⚡

腹痛は”場所”と”痛み方”で原因が変わります

「お腹が痛い」という症状は、消化器内科で最も多く訴えられる症状の一つです。痛みの場所・性状・タイミングによって考えられる原因は大きく異なり、胃や腸の比較的軽い炎症から、急性膵炎・虫垂炎・腸閉塞など緊急性の高い病気まで幅広い可能性があります。

この記事の前半では、腹痛の場所ごとのセルフチェックと警告サインを分かりやすくまとめます。後半ではガイドラインに基づいた専門的な解説に進みます。

🔰 まずはここから(やさしい解説)

痛みの「場所」で考えられる病気

右上腹部

  • 胆石症
  • 胆のう炎
  • 肝炎・肝膿瘍

みぞおち

  • 胃炎・胃潰瘍
  • 十二指腸潰瘍
  • 急性膵炎
  • 機能性ディスペプシア

左上腹部

  • 胃炎・胃潰瘍
  • 急性膵炎
  • 脾疾患

右側腹部

  • 尿管結石
  • 大腸疾患

おへそ周辺

  • 小腸炎
  • 過敏性腸症候群
  • 腸閉塞(初期)

左側腹部

  • 尿管結石
  • 大腸疾患

右下腹部

  • 虫垂炎(盲腸)
  • クローン病
  • 大腸憩室炎

下腹部中央

  • 膀胱炎
  • 婦人科疾患
  • 便秘

左下腹部

  • 大腸憩室炎
  • 虚血性大腸炎
  • 潰瘍性大腸炎

※ 痛みの場所はあくまで一つの手がかりであり、実際の原因の確定には問診・検査が必要とされています。同じ病気でも痛みの出る場所には個人差があります。

⚠️ このサインがあれば早めに受診を

  • 🔥 突然始まった激しい痛み
  • 🌡️ 発熱を伴う腹痛
  • 🩸 血便・黒色便がある
  • 🤮 繰り返す嘔吐・吐血を伴う
  • 💧 冷や汗・血圧低下を伴う
  • 😵 意識がもうろうとする
  • 📅 数日以上繰り返す、または悪化している

特に突然の激痛(「人生最悪」クラスの痛み)は、腸管穿孔・腸閉塞・腹部大動脈瘤破裂など一刻を争う可能性があるとされており、速やかに救急受診することが望ましいとされています。

🔬 ここから専門解説

ここからはガイドラインに基づいて、各疾患の特徴をやや専門的に解説します。

みぞおちの痛みで考えられる主な病気

胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍

胃粘膜や十二指腸粘膜の炎症・潰瘍によって生じる痛みです。空腹時や夜間に痛みが増すことがあり、ピロリ菌感染や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用との関連が指摘されています。日本消化器病学会の「消化性潰瘍診療ガイドライン2020」では、ピロリ菌除菌が潰瘍の再発予防に有効とされています。

機能性ディスペプシア(FD)

内視鏡などの検査で明らかな器質的異常が見つからないにもかかわらず、みぞおちを中心とした腹部症状(食後膨満感・早期満腹感・心窩部痛・心窩部灼熱感)が続く状態とされています。日本消化器病学会「機能性消化管疾患診療ガイドライン2021 FD」では、胃の運動機能異常・内臓知覚過敏・心理社会的因子などが複合的に関与する多因子性の病態とされています。

急性膵炎

急激なみぞおちの痛みが背部に放散するのが特徴的とされており、アルコールや胆石が主な原因と考えられています。「急性膵炎診療ガイドライン2021」では、重症化すると多臓器不全を引き起こすリスクがあるとされており、早期の入院管理が重要とされています。

右下腹部の痛みと虫垂炎

右下腹部(マックバーニー点周辺)の圧痛は虫垂炎(急性虫垂炎)を示唆するサインとして知られています。初期はおへそ周囲の痛みとして始まり、時間の経過とともに右下腹部に移動する「疼痛移動」が特徴的とされています。発熱・嘔吐・白血球増加を伴うことが多く、穿孔(虫垂が破れること)を防ぐため早期の外科的評価が必要とされています。

左下腹部の痛みと炎症性腸疾患

虚血性大腸炎

大腸への血流が一時的に低下することで起こる炎症で、突然の左下腹部痛・下痢・血便が特徴的とされています。高血圧や動脈硬化があるご高齢の方に比較的多いとされ、大腸カメラで診断されることが多いとされています。

大腸憩室炎

大腸の壁に生じた小さな袋(憩室)に炎症が起きることで腹痛・発熱を生じる病態です。左下腹部に多いとされますが、右側にも生じることがあります。

潰瘍性大腸炎・クローン病

炎症性腸疾患(IBD)の代表的な2疾患で、腹痛・血便・下痢が主要な症状とされています。日本消化器病学会「炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020」では、内視鏡検査が診断の確定に不可欠とされており、寛解・維持を繰り返す慢性疾患として長期管理が必要とされています。

腹痛を繰り返す:過敏性腸症候群(IBS)

内視鏡検査などで明らかな器質的異常を認めないにもかかわらず、腹痛や腹部不快感に便通異常(下痢・便秘・交互型)が伴う状態です。日本消化器病学会「IBS診療ガイドライン2020」では、腸管の運動異常・内臓知覚過敏・脳腸相関の異常・腸内細菌叢の変化などが複合的に関与すると考えられています。ストレスとの関連が指摘されており、若い世代に多い傾向があるとされています。

腹痛の診断に用いられる主な検査

🔭 胃カメラ(上部内視鏡)

みぞおちの痛み・胃もたれ・吐き気に。胃炎・潰瘍・胃がん・ピロリ菌感染などを直接確認できる検査とされています。

🔭 大腸カメラ(大腸内視鏡)

下腹部痛・血便・便通異常に。大腸がん・ポリープ・IBD・虚血性大腸炎などの診断に有用とされています。

🔬 CT検査・超音波検査

虫垂炎・憩室炎・胆のう炎・膵炎などの診断に有用とされています。急性腹症では画像検査が優先されることが多いとされています。

よくある質問

Q. ストレスで腹痛になることはありますか?

過敏性腸症候群(IBS)や機能性ディスペプシア(FD)ではストレスや自律神経の乱れが症状に関与することがあるとされています。ただし「ストレスが原因だろう」と自己判断する前に、血便・体重減少などの警告症状がないかを確認することが重要とされています。

Q. みぞおちが痛いときに胃カメラは必要ですか?

みぞおちの痛み・胃もたれ・吐き気がある場合は、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)が原因の鑑別に有用とされています。特に症状が続いている場合や、40歳以上で初めてこのような症状が出た場合には、胃がんや潰瘍の除外のために検査が検討されます。

Q. 腹痛が数日続く場合はどうすればいいですか?

数日以上続く、または繰り返す腹痛は自然に改善しないことも少なくないとされており、消化器内科での診察が望ましいと考えられています。市販の鎮痛薬で症状を抑え続けることで、診断が遅れるリスクも指摘されています。

まとめ

腹痛の原因は、痛みの場所・性状・タイミングによって胃炎や過敏性腸症候群のような機能的な病気から、虫垂炎・急性膵炎・炎症性腸疾患など早期対応が必要な病気まで幅広いと考えられています。

突然の激しい痛み・発熱・血便などの警告症状を伴う場合には、速やかに医療機関を受診することが望ましいとされています。

繰り返す腹痛や長引く症状には、胃カメラや大腸カメラによる精密な評価が検討されます。「いつものこと」と放置せず、原因を確認することが大切とされています。

監修

医師監修:島田竜 医師

医学博士/さいたま市民医療センター 大腸外科部長
日本外科学会認定 専門医
日本大腸肛門病学会認定 専門医
日本消化器内視鏡学会認定 専門医
日本消化器外科学会認定 専門医

参考文献

  • 日本消化器病学会(編)「消化性潰瘍診療ガイドライン2020 改訂第3版」南江堂、2020年
  • 日本消化器病学会(編)「機能性消化管疾患診療ガイドライン2021 機能性ディスペプシア(FD) 改訂第2版」南江堂、2021年
  • 日本膵臓学会(編)「急性膵炎診療ガイドライン2021 第5版」金原出版、2021年
  • 日本消化器病学会(編)「炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020」南江堂、2020年
  • 日本消化器病学会(編)「過敏性腸症候群(IBS)診療ガイドライン2020」南江堂、2020年
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