その便秘、「体質だから」で済ませて大丈夫?
見分け方をやさしく解説します
便秘は多くの方が経験する身近な症状ですが、「生活習慣によるもの」と「病気が関係しているもの」では、対応の仕方が変わってくると言われています。
この記事は前半でサクッと自分の状態をチェックできるようにまとめ、後半ではガイドラインに基づいたやや専門的な内容まで踏み込んで解説します。
そもそも「便秘」ってどこから?
国際的な診断基準(Rome IV基準)では、次のうち2つ以上が当てはまり、かつ他の病気が否定される場合に「機能性便秘」と考えられるとされています。
- 排便の4回中1回以上で強くいきむ必要がある
- 硬い便・コロコロ便が4回中1回以上ある
- 残便感が4回中1回以上ある
- 排便回数が週3回未満
※ これは「機能性便秘」の目安であり、これに当てはまるからといって即座に診断が確定するものではありません。あくまで一つの基準として参考にされています。
便秘には大きく2つのタイプがある
⚙️ 機能性便秘
腸の動きや生活習慣が関係するタイプ
- 食物繊維・水分不足
- 運動不足
- 排便を我慢する習慣
- ストレス・自律神経の乱れ
- 加齢による腸の動きの低下
🔍 器質性便秘
大腸など臓器に原因があるタイプ
- 大腸がん・大腸ポリープ
- 腸閉塞・大腸の狭窄
- 過去の手術による癒着
- 甲状腺機能低下症などの全身疾患
※ この分類は、日本消化器病学会「慢性便秘症診療ガイドライン2017」、および日本消化管学会「便通異常症診療ガイドライン2023 慢性便秘症」でも基本的な考え方として整理されています。
⚠️ このサインがあれば早めに相談を
- 🩸 便に血が混じる
- ⚖️ 体重が減ってきた
- 📏 便が急に細くなった
- 🔄 便秘と下痢を交互に繰り返す
- 😣 強い腹痛や腹部の張りが続く
- 🎂 50歳以降になって急に便秘がひどくなった
これらは「警告症状(アラームサイン)」と呼ばれ、単なる生活習慣の影響ではなく、大腸の病気が背景にある可能性を考えるきっかけになると言われています。1つでも当てはまる場合は、自己判断で便秘薬を使い続けるより、医療機関で相談することが望ましいとされています。
ここからは、ガイドラインに基づいて少し専門的に解説します。気になる部分だけ読んでいただいても構いません。
慢性便秘症の医学的な定義
慢性便秘症は、本来排泄すべき便が大腸内に滞ったり、排便を快適に行えない状態が慢性的に続く病態と整理されています。日本消化器病学会「慢性便秘症診療ガイドライン2017」では、国際的なRome IV基準を踏まえた定義・分類が示されており、2023年には日本消化管学会から新規薬剤の情報なども反映した「便通異常症診療ガイドライン2023 慢性便秘症」が刊行されています。
慢性便秘症の有病率は国や地域によって幅があるものの、おおむね10〜15%程度と見積もられているとされ、若い女性に多い一方で、加齢に伴い男女ともに増加し、高齢になると男女差が縮まるとも言われています。
機能性便秘の主な分類
- 大腸通過正常型:腸の動き自体に大きな異常はないが、便秘の症状を自覚するタイプ
- 大腸通過遅延型(弛緩性便秘):大腸の動きそのものが低下しているタイプ
- 機能性便排出障害型:直腸や肛門の機能的な問題により、便をうまく排出できないタイプ
どのタイプに当たるかによって、有効とされる対処法も異なると考えられています。
器質性便秘で注意したい病気
便秘症のリスク要因として、女性であること、身体活動性の低下、腹部手術歴(大腸手術や婦人科手術など)、加齢などが挙げられています。また、特定の基礎疾患(糖尿病、甲状腺機能低下症、パーキンソン病、強皮症などの膠原病、うつ病などの精神疾患)や薬剤(抗コリン薬、向精神薬、医療用麻薬、抗がん剤など)によって引き起こされることもあるとされています。
なかでも、大腸がんによって便の通過が物理的に妨げられることで便秘症状が現れるケースは、初めて便秘を診療する際に特に注意すべき器質的疾患として位置づけられています。
大腸内視鏡検査が検討される目安
便秘の診療では、機能性便秘(いわゆる体質的な便秘)なのか、器質性便秘(大腸がんなどが関係するもの)なのかを見極めることが重要とされています。腫瘍性・炎症性の病気の可能性を検討する必要がある場合には、大腸内視鏡検査を行うことが勧められています。
- 血便や便が細くなるなどの症状を伴う
- 体重減少を伴う
- 50歳以降で初めて便秘の症状が出てきた、または急に悪化した
- 便秘薬を使っても改善しない
- 家族に大腸がんの方がいる
便秘の治療の考え方
「慢性便秘症診療ガイドライン2017」では、薬物療法に先立って生活習慣の改善(食事・運動・排便習慣の見直し)が推奨されており、食物繊維の摂取や適度な運動、毎日同じ時間に排便を試みる習慣づけなどが基本的な対処法として位置づけられています。
生活習慣の改善で症状が十分に改善しない場合には、酸化マグネシウムやポリエチレングリコール(PEG)製剤などの緩下剤に加え、近年ではルビプロストン・リナクロチド・エロビキシバットといった新規便秘症治療薬も選択肢になり得るとされています。ただし、これらの薬剤は「他の便秘症治療薬で効果不十分な場合に使用すること」といった条件が付されている場合があるため、使用にあたっては医師の判断が前提となります。
よくある質問
Q. 便秘は市販薬で様子を見ても大丈夫ですか?
多くの便秘は生活習慣の見直しや市販薬で対応できると言われていますが、血便・体重減少・便が細くなるなどのサインを伴う場合は、自己判断で薬を使い続けるのではなく医療機関での確認が望ましいとされています。
Q. 便秘の解消に効果的な食べ物はありますか?
食物繊維を多く含む食品に加え、キウイフルーツやプルーン、オオバコなどの摂取が有効とされる報告があります。あわせて、適度な水分摂取や有酸素運動も症状の改善に役立つと言われています。
Q. 便秘が続くと大腸がんのリスクが上がりますか?
便秘そのものが大腸がんの直接の原因になると断定されているわけではありませんが、大腸がんによって便の通過が妨げられ、結果として便秘の症状が現れることがあるとされています。そのため、便秘の原因を確認する過程で大腸がんの有無を調べることには意味があると考えられています。
まとめ
便秘の多くは生活習慣に関連する機能性便秘と考えられていますが、大腸がんなどの器質的な病気が背景にある器質性便秘も存在します。
血便・体重減少・便が細くなるなどの警告症状を伴う場合や、50歳以降で急に便秘が悪化した場合には、大腸内視鏡検査による評価が検討されます。
「ずっとこうだから」と決めつけず、気になる変化があれば一度医療機関で相談することが望ましいと考えられています。
医師監修:島田竜 医師
医学博士/さいたま市民医療センター 大腸外科部長
日本外科学会認定 専門医
日本大腸肛門病学会認定 専門医
日本消化器内視鏡学会認定 専門医
日本消化器外科学会認定 専門医
参考文献
- 日本消化器病学会(編)「慢性便秘症診療ガイドライン2017」南江堂、2017年
- 日本消化管学会(編)「便通異常症診療ガイドライン2023 慢性便秘症」南江堂、2023年

